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執筆者の写真noriko iwakawa

灯油窯の窯出し

「苦あれば楽あり」。この言葉を、窯出しの時にいつも思います。


時間をかけて地味な窯入れ、灼熱の本焼きなどの作業の後の、嬉しい窯出しです。私は電気窯ではなく灯油の窯を使っているので、マイコン制御付きとは違って、一回一回焼き方で色が変わります。


灯油の窯を初めて使ったのは、陶芸を学んでいた短大生の時でした。左右にバーナーがついている窯で、朝つけて夕方消していました。


1230度でねらしを1時間、ねらしの間は側について、その温度をキープしなくてはなりません。なかなか温度が上がらず、暗くなってからの学校で、お腹が減った時に母が持たせてくれた、具に瓶ウニが入った小さめのおむすびを食べたのを思い出します。おいしかったなぁ。


それからずっと、灯油窯ばかり使っています。20歳の頃からなので、40年近く使っているのかと思うと、自分でも驚いてしまいます。



電気の窯とは違って、自分で消してくれないので失敗もあります。陶芸作業を途中で中断されるのが嫌なので、昔からつい夜中にやってしまいます。NHKの『ラジオ深夜便』など聞きながら、釉薬を掛けては窯入れです。


窯入れが終わった頃は外が明るくなっていて、そのまま火入れになることもしばしば。そうなると、その日は眠くて仕方ありません。


一番大事な高温になった時うっかり寝てしまったらもう大変。先日も目覚ましのタイマーを無視して寝入ってしまい、気がついて慌てて温度を見たら、なんと1261度! 大慌てで消しました。


さてそれから、窯出しまでが心配です。もし釉薬が流れてしまっていたらどうしよう……。注文のものは作り直しか。体験の方、生徒さんのはどうしよう……


不安な2日を過ごした後、やっと窯出しです。


重たい蓋を開けて、作品をつついてみたら、動くではないですか! あ〜〜〜よかった。釉薬流れてないわ、ほっと一息です。


陶器のことを「やきもの」といいますが、それほど、陶芸において「焼く」が重要な要素だからなんだな、と思います

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